ボートレースを始めたばかりの方に紹介したいのが、モーターやプロペラの重要性です。着順の予想は「競艇選手の強さ」や「コース」などの要素だけではありません。モーターやプロペラの性能や、整備の仕方で着順に大きく影響します。
ボートレースにおける整備にスポットをあてて、モーターやボート、プロペラの重要性についてそれぞれ紹介します。
モーターの重要性
ボートの心臓部であるモーターは、レースに大きく影響するため、部品の中では最も重要な部品です。モーターの整備は、予想するうえで重要な要素になりますので、性能や整備に関する知識はおさえておく必要があります。
モーターのスペック
ボートレースで使用されるモーターは、ヤマハ発動機の「水冷式縦型直列2気筒2サイクルのガソリンエンジン」で、排気量は396.9ccです。2020年現在では、レース場に関わらず統一したモーターを搭載しています。およそ1年で交換されます。
エンジンの下部にある車軸にプロペラを取り付けて、回転させることで推進力を得ます。
抽選で決まる
モーターは、前日検査の抽選によって各選手に割り当てられます。モーターの良し悪しは、同じモーターを使っていても「良し悪し」があり、勝率が高いモーターを使えるかどうかは「選手の運」にかかっています。
モーターの成績
同じモーターを使用していても個体差によって性能に差があり、その違いはモーターの勝率で確認することができます。
出走表をみると、選手の勝率以外にモーターの「番号」「2連率」「3連率」などの数値が記載されています。ここでは、モーターの個体ごと(番号)の2位以内に入った割合(2連率)と、3位以内に入った割合(3連率)で、モーターの性能を分析できます。
モーター整備
抽選によって割り当てられたモーターには個体差があるため、レーサーは自ら整備や部品交換をすることで、調子を上げていくことができます。
この整備はレーサー自身で行わなければならず、整備の上手さも選手の特性として大事な要素になります。ボートレース場には常駐の整備士がいますが助言をしても、手を出すことは許されていません。
モーター部品の交換
選手がモーターを整備する中で、消耗したり調子が悪い部品を見抜いて交換することがあります。交換には許可が必要で、さらにレース前に交換を行った部品は情報公開されます。
調子が悪いモーターは、部品交換を行ったことで調子をあげていくかもしれないので、チェックしておきましょう。
交換可能な部品 | 効果 |
ピストン | 上下2つのピストンのバランス調整し、スタート時の加速力のUPしたいときに交換します。 |
ピストンリング | モーター性能に大きく関わる部品で、摩耗するので頻繁に交換されます。 |
ギヤケース | ギヤの調整し加速力をUPします。大事な部分であるため、交換の際には神経をすり減らします。 |
キャリアボデー | モーターの胴体で、排気ガスが通る部品でもあり、出力に影響します。 |
キャブレター | 空気と燃料を混合比を調節できます。天候によって交換することがあります。 |
電気一式 | 転覆したときに交換します。 |
シリンダーケース | 上元運動するピストンによって摩耗することで、出力にロスが生じます。不調の場合に交換しますが、高価なので許可は簡単に出ない。 |
クランクシャフト | モーターの中枢部。大がかりな作業が必要で、高価なので滅多なことで交換することはない。 |
出足型・伸び足型
モーター整備するうえで、その調整は大きく分けて2つの方向性があります。
出足型は、スタート時の加速に大きく関わり、低速からの加速を重視したセッティングです。一方、伸び足型は、直線のトップスピードを重視したセッティングになります。
戦術に合わせてどちらを重視したセッティングにすることが重要になります。
ボートの重要性
暴れる水面をトップスピードで走行するレーサー自身が命をあずける船体にも、統一規格があるものの個体差があり、自分なりの走りを求めるには整備が必要になってきます。
ボートのスペック
どのレースにおいても統一した形(全長289.5cm、全幅133.6cm、重量75kg)の木製のボートが使用されます。表面のカラーリングは各ボートレース場によってデザインが異なります。船底は平面で、中央部にフィンがついています。
ボートも抽選で決まる
モーターと同様に、ボートは各ボートレース場の持ち物で、前日検査の抽選で各レーサーに割り振りされます。
ボートの成績
モーターほど個体差は無いと言われますが、出走表でボートの勝率を確認することができます。
出走表をみると、ボートの「番号」「2連率」「3連率」などの数値が記載されています。ここでは、ボートの個体ごと(番号)の2位以内に入った割合(2連率)と、3位以内に入った割合(3連率)で、ボートの性能をチェックすることができます。
ボートの整備
ハンドルの重さは、レーサーの好みによって調整できます。ハンドルを軽く回せるようにしたり、安定性を重視するために重く設定したりして、戦略によって変える場合があります。
レースで破損した場合は、ボートレース場の艇修理係が修理してくれます。修理ができないほどの破損は、抽選で改めてボートを割り振ります。
プロペラの重要性
競艇では通称「ペラ」と呼ばれるプロペラは、モーターによって回転が与えられ、ボートに推進力を与えます。旋回性や加速性などに関わる重要な部品で、プロペラの調整技術によってレース展開に大きく影響します。
持ちペラ制度の廃止
2012年3月以前は、プロペラはレーサーの持ち物で、自身で加工した5枚のプロペラを戦略に合わせてレースで使用していました。いわゆる「持ちペラ制度」です。
勝つためのプロペラ加工技術はとても難しく、一人前になるためには4年はかかると言われていたので、若手の選手はベテランの選手に弟子入りして、技術指導を受けていました。
その時代には、伸び足重視のプロペラを使い、6コースから捲り勝負を仕掛ける「アウト屋」といわれる選手がいて、レース展開を熱くしてくれていたのですが、「持ちペラ制度」廃止により「アウト屋」には苦しい時代になってきました。
ペラのスペックと整備
プロペラはヤマト製のもので直径187mm、基準ピッチ215mm、重さ373gの2枚羽と統一された規格があるものの、モーターやボートと同様に、前日検査の抽選で提供されます。
プロペラは、レース期間中に木槌で調整することが出来ます。モーターと同様に、プロペラの整備する技術無しには勝つことは難しく、整備する精度は紙1枚分の厚さレベルで調整され、高度なテクニックと経験が必要と言われています。
プロペラは大きく分けて、「伸び足重視」か「出足重視」で調整され、レーサーの特性や戦術、レース当日の気象によって変更します。
まとめ
ボートレース中に魅せる豪快なターンの姿に、レーサーの強さはボートを操る技術や度胸と感じてしまいます。
しかし、まさに水面下では運によって与えられたモーターやプロペラ、ボートを、自分が追い求めるレベルまで整備する技術や知見がレーサーの強さには必要不可欠です。その技術が土台となり、そこではじめて水上では華麗な競争を演出してくれるのです。
着順を予想するのに、モーターやボートの勝率、それらを整備するレーサーの技術力の要素を取り入れると、より一層ボートレースの面白さをファンに提供してくれるでしょう。
【参考】
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